院長コラム

PSAってなに?検診で数値が高かったけどどうしたらいいの?

みなさん、「PSA(ピーエスエー)」という言葉を聞いたことはありますか?
40~50歳代の男性の方は、健康診断やオプション検査で「PSAの値」を見たことがあるかもしれません。ここでは、PSAの意味や、数値が高かったときにどうすればよいのかを簡単にご説明します。

PSAは「前立腺特異抗原」という、前立腺でつくられるたんぱく質の一種です。
もともとは精液に含まれるものですが、少しだけ血液にも混ざります。前立腺に異常があると血液中に多く漏れ出して、PSAの数値が高くなります。そのため、前立腺がんを調べるための「腫瘍マーカー」として利用されています。

一般的な基準値は4.0 ng/mL以下とされています

年齢によって設定される場合もあります:

PSAが高くなる理由は多岐にわたります。前立腺がんだけでなく、以下のような要因も考えられます。

  • 前立腺がん: PSAが高くなるほど、がん発見の可能性が高まりますが、それだけで診断はできません。
  • 前立腺肥大症: 前立腺が大きくなることでPSA産生が増え、数値が上がることがあります。
  • 前立腺炎: 炎症により細胞が破壊され、PSAが血中に漏れることがあります。急激に上昇した場合は感染や炎症を疑います
  • 機械的・身体的刺激: 射精や長時間の車・自転車の運転などで一時的に上昇する場合があります。

PSA値が高いと言われたら、泌尿器科で以下のような検査・評価が行われることがあります。

尿検査:前立腺炎や尿路感染などの炎症が疑われる場合、尿中の白血球などをチェックします。

超音波検査(エコー):前立腺のサイズや形・内部の様子を確認します。癌の疑いがある部位では低エコー像と呼ばれる所見が見られることがあります。

直腸診:おしりに指をいれ、直腸経由で前立腺を触診する検査になります。前立腺のしこりや硬さなどを検査します。PSAの上昇しない前立腺癌などが触診で見つかることもあります。PSA検査と合わせて評価します。

PSADの測定:下で詳しく説明しています。

PSA再検査:炎症や刺激による上昇が疑われる場合などは時間をあけて再度採血し、値の変動を確認します。やはり高値である場合は精密検査に進みます。

検査により精査が必要と判断された場合はMRIによる画像評価に進みます。

MRIではアレルギーや腎機能が問題なければ造影剤を使用します。造影剤を使用することでより癌の診断能力が上がります。

MRIでがん疑いがある場合は前立腺生検検査によって確定診断となります。(前立腺癌や生検についてはコラムにする予定なのでもうしばらくお待ちください)

MRIでがん疑いは低い(前立腺肥大のみなど)と診断された場合でも、癌のリスクが高いと判断した場合は生検をすすめることもあります。

PSAの数値は、がん だけでなく 前立腺肥大 でも高くなることがあります。

そこで「前立腺の大きさ」を考慮して計算する方法が PSAD(PSA密度) です。

計算方法はとてもシンプルで、

PSAD = PSAの数値 ÷ 前立腺の大きさ(体積) です。

どんな意味があるの?

前立腺が大きいだけでPSAが高い場合 → PSADは低くなります。

前立腺があまり大きくないのにPSAが高い場合 → PSADは高くなり、「がんの可能性が高いかもしれない」と考えられます。

判断の目安

0.15未満 → がんの可能性は低め

0.15以上(最近は0.20以上を目安とする考え方もあり) → がんの可能性が高め、生検(細胞をとる検査)を検討

👉 つまり、PSADは「PSAが高い原因が 前立腺の大きさによるものか、それともがんの可能性なのか」を見分ける助けになる検査です。

健康診断などで PSAが3.5 と言われると、「基準の4以下だから大丈夫」と思う方も多いと思います。
しかし、実際には 数値だけで安心してはいけない場合 があります。

1. 家族に前立腺がんの方がいる場合

  • 前立腺がんは 家族歴(遺伝的な背景) がとても重要です。
  • 兄弟や父親や祖父が前立腺がんだった場合、自分のリスクも2~3倍高くなります。
  • そのため、たとえ50歳で PSA 3.5 であっても、精密検査をおすすめすることがあります。

2. 薄毛治療薬(AGA薬)を使っている場合

  • プロペシア(フィナステリド) や ザガーロ(デュタステリド) を服用すると、PSAの値は 半分に低く出る ことが知られています。
  • つまり、検査で PSA 3.5 と出ても、実際は 7.0相当 ということになり、がんのリスクを見落とす可能性があります。
  • 特に、インターネットで購入していて主治医に伝えていないケースでは注意が必要です。
  • 前立腺肥大症の薬「アボルブ」も同じ成分なので、PSAが半分に見えます。ただしこちらは泌尿器科で処方されることが多いため、医師も把握しています。

つまり PSAの数値は「4以下だから安心」とは言い切れません。

  • 家族歴
  • 薬の使用状況
  • 年齢や症状

などを総合的に見て判断する必要があります。

少しでも不安に思ったら、早めに泌尿器科へ相談 してください。

始めてPSAが検診で指摘され不安、徐々に上昇しているので相談したいなどいろいろな方がおられると思います。ちょっとしたことでも気軽に相談していただけたらと思います。

検診でPSA高値であった、内科でPSAが高いといわれた、前立腺癌が心配な方は岡山駅東口徒歩3分の泌尿器科の『おかやま腎泌尿器科クリニック』までお気軽にご相談下さい。

おかやま腎泌尿器科クリニック 

院長 光井 洋介(泌尿器科専門医)

参考文献

Wang S, et al. “Diagnostic Performance of Prostate-specific Antigen Density for Detecting Clinically Significant Prostate Cancer in the Era of MRI: A Systematic Review and Meta-analysis.” Eur Urol Oncol. 2024 Apr;7(2):189–203.

・Grönberg H. “Prostate cancer epidemiology.” Lancet. 2003 Mar 8;361(9360):859–64.