皆さんこんにちは。本日は「マイコプラズマ・ジェニタリウム」という性病の原因菌についてお話しします。
「マイコプラズマ」と聞くと、肺炎を起こす“マイコプラズマ肺炎”を思い浮かべる方も多いと思います。
しかし今回ご紹介する マイコプラズマ・ジェニタリウム(Mycoplasma genitalium) は、肺ではなく 性器や尿道に感染する性病の原因菌 です。

🔬 マイコプラズマ・ジェニタリウムとは?
マイコプラズマ・ジェニタリウムは、1980年代に発見された比較的新しい病原菌で、クラミジアや淋菌と同じように性行為によって感染します。
男性では尿道、女性では子宮頸部や膣に感染し、炎症を起こします。
以前は検査方法が限られていたため見逃されることが多く、「原因不明の尿道炎」の中に多く潜んでいることが分かってきました。
🚹 主な症状
男性の場合
- 尿道のかゆみ・違和感
- 排尿時の痛み
- 透明または白っぽい分泌物(膿)
- 尿道の軽い不快感が続く
※クラミジアや淋菌と似ていますが、症状が軽く長引くのが特徴です。
※男性でも無症状の場合もあります。パートナー陽性のため検査すると無症状ですが陽性だったということもあります。
女性の場合
- おりものの増加やにおいの変化
- 下腹部の痛み
- 性交時の痛み
- 不正出血
女性では無症状のことも多く、不妊や骨盤内感染症の原因になることもあります。
★症状があり淋菌・クラミジアを検査したけど両方陰性
★淋菌・クラミジア尿道炎で治療したけどまだ完全にすっきりしない
という場合はマイコプラズマ・ジェニタリウム感染の可能性もあります。
🔍 検査方法
以前は検出が難しかったマイコプラズマ・ジェニタリウムですが、2022年6月に保険収載され、現在は PCR法(遺伝子検査) により精度の高い検査が可能になっています。
男性は尿を、女性は膣ぬぐい液や子宮頸部からの検体を採取して調べます。
💊 治療方法
抗生物質(マクロライド系・ニューキノロン系)で治療しますが、マイコプラズマ・ジェニタリウムは薬剤耐性菌が多いことが大きな問題です。
元々はマクロライド系であるアジスロマイシンが第一選択薬であったマイコプラズマ・ジェニタリウムですが、現在は60~70%は薬剤耐性があるといわれており、アジスロマイシンによる治療効果が期待できないのが現状です。
現在は、ニューキノロン系の抗菌薬であるシタフロキサシンは効果が高いとされています。
しかし、マクロライド系もニューキノロン系の抗菌薬も効きにくい多剤耐性のマイコプラズマも見つかっています。
そのような場合にはテトラサイクリン系抗菌薬を組み合わせて2週間以上にわたって使うこともあり治療に難渋する場合もあります。
症状がなくなっても治療後に陰性の確認をしっかり行うことも重要となってきます。
⚠️ 問題点・注意点
- 症状が軽いため気づかず感染を広げてしまう
- 検査をしないと他の性病と区別がつかない
- 抗生物質が効きにくく再発しやすい
- 女性では不妊症や流産・早産の原因になる可能性
感染に気づかないまま放置すると、将来の健康にも影響することがあるため、早期発見・早期治療が重要です。
クラミジアや淋菌、マイコプラズマ・ジェニタリウムなど性病について相談したい、検査・治療したい方は岡山駅東口徒歩3分の泌尿器科の『おかやま腎泌尿器科クリニック』までお気軽にご相談下さい。
おかやま腎泌尿器科クリニック
院長 光井 洋介(泌尿器科専門医)
参考文献
・Roshina Gnanadurai, Helen Fifer. Mycoplasma genitalium: A Review. Microbiology (Reading). 2020 Jan;166(1):21-29.
・Angela Copete et al. Mycoplasma genitalium Infections and Associated Antimicrobial Resistance in Canada, 1980–2023. Trop Med Infect Dis. 2025 May 19;10(5):139.
・Gwendolyn E Wood, Catriona S Bradshaw, Lisa E Manhart. Update in Epidemiology and Management of Mycoplasma genitalium Infections. Infect Dis Clin North Am
. 2023 Jun;37(2):311-333.
