皆さんこんにちは。

本日は「前立腺肥大」と、特にお正月などに多い「飲みすぎによる尿が出ない(尿閉)」についてお話しします。
お正月の時期は、ついお酒を飲みすぎたり、市販の風邪薬を服用したりしてしまうことがあります。
実はこの行動が「尿がまったく出ない・出づらい」という状態を引き起こし、夜間救急受診につながることがよくあります。
特に前立腺肥大がある方(未治療の方)はリスクが高く、注意が必要です。
「最近トイレが近い」「勢いが弱い」と感じている方は、ぜひ早めにご相談ください。
前立腺とは?
前立腺は、膀胱の出口にある男性特有の臓器で、精液の一部を作る働きがあります。
ちょうど“尿の通り道(尿道)を囲む形”になっており、ここが腫れてくると尿の流れが悪くなります。
正常の大きさ: 約20〜30g(クルミ大)
前立腺肥大とは?

加齢とともに前立腺が大きくなる病気で、50歳以上の男性に非常に多くみられます。
前立腺が肥大すると尿道が押しつぶされるように細くなり、排尿トラブルが出てきます。
どのような症状があるの?
前立腺肥大の症状は大きく分けて2種類あります。
① 排尿症状(出にくい症状)
- 尿の勢いが弱い
- 尿が出始めるまで時間がかかる
- 尿が途切れる
- 残尿感がある
駅のトイレなどで横の人が何人も変わるのに自分はまだ終わらない、
やっと終わったと思ってズボンのチャックをあげると少し残りが出てくる。
こんな症状に思い当たることはありませんか?
これらも前立腺肥大が原因の可能性があります。
② 蓄尿症状(トイレが近い症状)
- 昼間の頻尿
- 夜何度もトイレに起きる
- トイレが急に我慢できない
徐々に進行していき、何も治療しないと突然まったく出なくなる「尿閉」を起こすことがあります。
前立腺肥大の検査
クリニックでは以下の検査で診断します。
- 尿検査:感染や血尿の有無を確認
- 超音波検査(エコー):前立腺の大きさ、残尿量を測定
- 血液検査:PSA(前立腺がんとの鑑別のため)
- 尿流測定:尿の勢い・速度を客観的に評価
痛みのある検査はほとんどありませんのでご安心ください。
前立腺肥大の治療
治療は症状の程度と前立腺の大きさにより異なります。
① お薬による治療(まずはここから)
- α遮断薬:尿道の締まりを緩め、尿を出しやすくする
- 5α還元酵素阻害薬:前立腺を小さくしていく(効果は数ヶ月で現れる)
多くの患者さんは薬で症状が改善する可能性が高いです。
② 手術
薬で改善しない重症例には、内視鏡手術(TUR-P、HoLEPなど)が検討されます。
近年、前立腺を水蒸気で治療するWave治療やインプラントを打ち込み物理的に通り道を広げるUroliftといった低侵襲治療も行われており手術治療の選択肢が広がっています。
前立腺肥大の人がお酒で尿が出にくくなる理由
「お酒を飲んだら突然尿が出なくなった!」という方は珍しくありません。
特にお正月に多いのでこれからの時期は要注意です!
理由は以下の3つです。
- アルコールで尿意が感じにくくなる
アルコールの作用が脳の中枢の感覚を鈍くさせ、尿意を感じにくくさせることがあります。
- アルコールの利尿作用 → 膀胱がパンパンになる、収縮力低下
お酒を飲むと尿がたくさん作られます。膀胱が過伸展(パンパンになる)することによって収縮して尿を押し出す力が低下します。前立腺肥大で通り道が細くなっている人は、急に増えた尿をうまく排出できなくなることがあります。
- うっ血による前立腺のむくみ
前立腺がむくんでしまうことで膀胱からの出口の部分の通り道がさらに狭くなってしまい尿が出なくなってしまいます。
市販の風邪薬にも注意!
市販感冒薬に含まれる「抗コリン作用」の成分は、膀胱の収縮力を弱める作用があります。
前立腺肥大の人は尿閉リスクが高くなります。
「前立腺肥大未治療」の方が、風邪気味で「市販薬を内服」し、忘年会で「いつも以上に飲酒」によって多くの患者さんが「尿閉」によって夜間救急を訪れることになります。
尿閉になると細い管で尿を排出させる(導尿)か、一時的に尿道に管を留置する(尿道カテーテル留置)ことで尿を排出させなければいけません。
気になる症状がある方は早めにご相談ください。
よくある質問
Q1. 我慢していればそのうち出ますか?
→ 危険です。
膀胱がパンパンのまま放置すると、腎機能低下や腎盂腎炎になる可能性があります。
出ないときは早めに受診してください。
Q2. 前立腺肥大は治りますか?
→ 完全に「元の大きさに戻る」わけではありませんが、
薬で症状は大きく改善します。薬で改善がない場合は手術を検討します。
Q3. 手術は痛いですか?
→ ほとんどの手術は麻酔下に内視鏡で行い、傷は残りません。
痛みも少なく、数日で退院する方が多いです。
Q4. 前立腺がんとは関係ありますか?
→ 別の病気ですが、年齢的に癌の可能性もあるので初診患者さんではPSA検査(前立腺癌マーカー)を行います。検診で測定されている方は結果を持参していただければ採血をしないこともあります。
Q5. 肥大の薬を飲んでいればお酒を飲んでもいいですか?
→肥大の程度や残尿(尿の残り具合)によります。主治医にご相談ください。
前立腺肥大や排尿トラブルについて相談・検査・治療したい方は岡山駅東口徒歩3分の泌尿器科の『おかやま腎泌尿器科クリニック』までお気軽にご相談下さい。
おかやま腎泌尿器科クリニック
院長 光井 洋介(泌尿器科専門医)
参考文献
- 日本泌尿器科学会:前立腺肥大症診療ガイドライン
- McVary KT. BPH: Epidemiology and Pathophysiology. Rev Urol.
- Roehrborn CG. Pathology of benign prostatic hyperplasia. Int J Impot Res.
