院長コラム

陰部のかゆみは泌尿器科?皮膚科?婦人科?

皆さんこんにちは。


本日はよくあるお悩みの一つ、「陰部のかゆみ」についてお話しします。

「半年前からかゆいけど我慢していた」
「皮膚科か泌尿器科、どちらに行けばいいかわからない…」
「市販の薬でごまかしていたが、なかなか改善しない」

このような相談は非常に多く、実は男女ともに「陰部のかゆみ」はよくみられるお悩み症状のひとつです。


今回は、かゆみの原因、検査、治療法についてわかりやすく解説します。


  • カンジダ性包皮炎
    真菌(カビ)の一種であるカンジダによって起こります。赤みや白いカス、かゆみが特徴です。
    パートナーが膣カンジダを持っている場合、うつることもあります。
  • 白癬(インキンタムシ)
    いわゆる「たむし」と呼ばれる皮膚のカビ(白癬菌)による感染です。
    太ももの付け根(鼠径部)や陰嚢に強いかゆみ、赤み、皮むけが出るのが特徴で、夏場や汗をかく季節に多く見られます。
    カンジダとは別の真菌が原因のため、抗真菌薬でも種類を誤ると治りにくいことがあります。
  • 性器ヘルペス
    痛みを伴う小さな水ぶくれができ、強いかゆみや違和感が出ます。ウイルス感染が原因です。かゆみよりも痛みが強いことがあります。
  • 陰嚢湿疹(いんのうしっしん)
    蒸れや汗、下着との摩擦などによって皮膚が炎症を起こし、かゆみを感じます。
    いわゆる「ただれ」「かぶれ」に近い状態です。
  • トリコモナス・クラミジア・淋菌などの性感染症(STD)
    かゆみだけでなく、排尿時の痛みや分泌物が出ることもあります。尿道の違和感をかゆみと感じている場合があります。感染症検査が必要です。
  • 毛ジラミ症                                              毛ジラミという吸血昆虫が陰毛に寄生して起こる感染症です。感染すると、男女ともに強いかゆみが起こります。性行為をしなくても、タオルやシーツなどを介してうつることがあります。

  • カンジダ膣炎
    強いかゆみと白いヨーグルト状のおりものが特徴です。抗真菌薬で治療可能です。
  • 細菌性膣炎
    膣内の菌のバランスが崩れて炎症を起こします。かゆみや異臭を伴うことがあります。
  • トリコモナス膣炎
    性感染症の一つで、泡状のおりものや強いかゆみ、悪臭を伴います。
  • 外陰部湿疹・接触皮膚炎
    生理用ナプキン、石鹸、下着などによるかぶれが原因の場合もあります。
  • GSM(閉経関連泌尿性器症候群)                                     更年期~閉経期にみられます。女性ホルモンの低下によって膣や外陰部の粘膜が乾燥することで生じます。かゆみや痛み、繰り返す膀胱炎の原因となります。
  • 毛ジラミ症                                              毛ジラミという吸血昆虫が陰毛に寄生して起こる感染症です。感染すると、男女ともに強いかゆみが起こります。性行為をしなくても、タオルやシーツなどを介してうつることがあります。

泌尿器科では、以下のような検査を行います。

  • 尿検査(炎症や細菌の有無を調べる)、尿の培養検査
  • 分泌物やおりものの顕微鏡検査、培養検査
  • 性感染症(クラミジア・淋菌・トリコモナスなど)のPCR検査
  • 真菌(カンジダ・白癬菌)の鏡検・培養検査
  • 必要に応じて血液検査

女性の場合は婦人科的な診察が必要なケースもありますが、まずは泌尿器科で相談いただいて問題ありません。


原因に応じて治療法は異なります。

  • カンジダ感染:抗真菌薬(塗り薬・内服)
  • 白癬(インキンタムシ):白癬菌に効果のある抗真菌薬(塗り薬中心)
  • 細菌感染:抗菌薬(内服・膣錠・点滴)
  • ウイルス感染(ヘルペスなど):抗ウイルス薬
  • 湿疹やかぶれ:ステロイド外用薬や保湿ケア
  • GSM:ホルモン療法

再発を防ぐためには、通気性の良い下着を選び、清潔を保つことが大切です。

市販薬で一時的に症状が軽くなっても、原因が残っていることが多いため、早めの受診をおすすめします。


Q. どちらの科を受診すべき?
男性は基本的に泌尿器科で対応可能です。
女性の場合も、かゆみやおりものの変化などがある場合は、まず泌尿器科で検査・相談いただけます。必要に応じて婦人科と連携して診療します。

Q. 白癬菌(インキンタムシ)はうつりますか?
はい、人から人へうつる可能性があります
白癬菌は「カビの一種」で、皮膚の角質層に感染します。足の水虫と同じ菌です。家族やパートナーとのタオルや下着の共有、共同の風呂マットなどから感染することもあります。
清潔を保ち、患部をかかないようにし、使用タオルを分けることで感染拡大を防げます。治療をすれば完治可能ですので、早めの受診をおすすめします。

Q. パートナーも検査したほうがいい?
感染が疑われる場合(カンジダ・トリコモナス・クラミジアなど)は、パートナーも同時に検査・治療することが大切です。


陰部のかゆみは、感染症・皮膚炎・アレルギーなどさまざまな原因で起こります。
自己判断で市販薬を使用すると悪化することもあるため、気になる症状があるときは専門医に相談しましょう。


陰部のかゆみについて相談・検査・治療したい方は岡山駅東口徒歩3分の泌尿器科
『おかやま腎泌尿器科クリニック』までお気軽にご相談ください。

おかやま腎泌尿器科クリニック
院長 光井 洋介(泌尿器科専門医)


参考文献

  1. 日本泌尿器科学会編『泌尿器科診療指針2023』
  2. 日本性感染症学会ガイドライン(2023年版)
  3. 厚生労働省性感染症対策マニュアル
  4. 日本皮膚科学会『皮膚真菌症診療ガイドライン2022』