院長コラム

PSAのグレーゾーンってなに?PSAが高いときに追加でできる検査とは?

皆様こんにちは。本日はPSAが高いといわれたときに追加でできる補助診断検査とPSAのグレーゾーンについてお話しします。

PSAの基準値は 4.0 ng/mL以下 とされています。
そのため、PSAが4を超えると詳しい検査をしましょう という流れになります。

ただし、4〜10 ng/mLのあいだ は「グレーゾーン」と呼ばれます。前回コラムでお話ししたように癌だけではなく前立腺肥大でも上昇するので年齢や前立腺体積などいろいろなことを総合的に考える必要があります。


この範囲に入っていても、実際に前立腺がんでない方は 約70% もいると言われています。

がんかどうかを確かめる「前立腺生検」は体に負担の大きい検査なので、むやみに受けなくてもよいように、追加の検査で「がんの可能性」をより正確に見分ける工夫がされています。

グレーゾーンの方ができる追加の検査としては①PSA F/T比、②S2,3PSA%検査があり、次から詳しく説明していきます。

その追加検査のひとつが PSA F/T比 です。

  • PSAには2種類あります。
  • 結合していないタイプ(Free-PSA)      
  • 他の物質とくっついたタイプ(結合型PSA)

これらを合わせたものが Total PSA(総PSA) です。

  • 前立腺がんの細胞から出てくるPSAは Free-PSAが少ない のが特徴です。
  • そのため、Free-PSAの割合が低いほど、がんの可能性が高い と考えられます。

計算式は
PSA F/T比 = Free-PSA ÷ Total PSA × 100

  • 25%以上 → がんの可能性は低め
  • 12〜25% → 中間的
  • 12%以下 → がんの可能性が高い

👉 まとめると、
PSAが「グレーゾーン」にあるとき、PSA F/T比を調べることで「生検が必要かどうか」を判断する助けになる ということです。

2024年から保険で受けられるようになった、新しい前立腺がんの補助検査 です。
弘前大学で開発され、PSA検査の精度をさらに高めることができます。

PSAは、がん細胞から出てくるものと、そうでないものとで 種類が少し違う ことがわかっています。

  • S2,6PSA → がんではない細胞から主に出てくるPSA
  • S2,3PSA → がん細胞から多く出てくるPSA

この2つを血液で測定し、S2,3PSAがどれくらいの割合を占めるか を調べるのが S2,3PSA%検査 です。

  • PSAが「グレーゾーン(4〜10 ng/mL)」にある方が対象
  • がんかどうかの可能性をより正確に判断し、不要な生検(細胞をとる検査)を減らす 目的で使われます。

判断の目安

  • 38%以上 → がんの可能性が高い
  • 38%未満 → がんの可能性は低め

👉 まとめると、
S2,3PSA%検査は、従来のPSA検査だけでは判断が難しい「グレーゾーン」の方に対して、がんの有無をより正しく見分けるための新しい血液検査 です。

どちらの検査も診断の補助的なものになるので最終的にはMRIなどの画像評価と合わせて生検をするかどうか検討することになります。     

いかがでしたでしょうか?少し専門的なお話になりましたがPSAが高いときにできる追加の補助的検査についてお話してみました。あくまでも補助診断なので、MRIなどの画像検査や今までの経過などと合わせて総合的に考える必要があります。PSA、前立腺癌で気になることがあるときには気軽にご相談いただければと思います。

検診でPSA高値であった、内科でPSAが高いといわれた、前立腺癌が心配な方は岡山駅東口徒歩3分の泌尿器科の『おかやま腎泌尿器科クリニック』までお気軽にご相談下さい。

おかやま腎泌尿器科クリニック 

院長 光井 洋介(泌尿器科専門医)

・Zhong JG et al., Predicting prostate cancer in men with PSA levels of 4–10 ng/mL: MRI-based radiomics can help junior radiologists improve the diagnostic performance Sci Rep. 2023

・Roddam AW, et al. Use of prostate-specific antigen (PSA) isoforms for the detection of prostate cancer in men with a PSA level of 2-10 ng/ml: systematic review and meta-analysis Eur Urol. 2005;48:386–399.

https://www.hirosaki-u.ac.jp/topics/92966/